2025年度
小さな森の学童株式会社
実証テーマ
親子のニーズにしっかり寄り添ったフリースクールの開設
実証概要
堺市内において不登校児童が増加する一方で、安心して通えるフリースクールの選択肢が限られているという課題に対し、既存施設を活用した新たな受け入れモデルの構築を行った。「安心できる固定スタッフ」の配置と「見通しの立つ教育的プログラム」の提供を通じて、通いやすさや利用への繋がりやすさ、登校復帰への効果を検証し、効果的な不登校対策モデルづくりへの貢献をめざす。
実証フィールド
小さな森の学童 三国ヶ丘1号校
実証レポート
不登校児童への柔軟な受け入れ態勢の構築と、復学・登校支援へのアプローチ
不登校の小中学生が増加する中、子どもたちが安心して過ごせる「第三の居場所」の整備が求められている。本実証では、小さな森の学童株式会社が学童保育の運営ノウハウを活かし、子どもと保護者の実態に寄り添う新たなフリースクールのモデル構築に取り組んだ。
実証期間中(本格受け入れ開始以降)、計10名の児童を受け入れ、うち4名が完全復学、2名が登校日数の増加につながる実績を得た。この実証の過程で、フリースクール運営におけるいくつかの実践的な知見が得られた。
① スタッフ体制の構築:
ヒアリングや運営を通じて、子どもや保護者にとって「顔なじみの固定スタッフが常駐すること」が安心感に直結することが確認された。すでに学童保育で関係性が構築されているスタッフを配置することで、来室の心理的ハードルを下げる環境を整備した。
② 学習から遊びを起点としたプログラムへの転換:
当初は復学を見据えた「学習サポート」に注力する予定であったが、子どもにとっては「勉強しなければならない」というプレッシャーになることが判明した。そこで、まずは学童保育で培った「遊びやアクティビティ」を前面に押し出す方針へ転換し、子どもたちが自発的に来室するモチベーションの創出を図った。
③ 実態に合わせた利用時間の設定:
不登校児童の中には生活リズムが崩れているケースが多く、朝9時からの開始が来室の障壁となることがわかった。これを受け、利用時間を10時以降に遅らせるなどの柔軟な変更を行い、無理なく通える環境を整えた。
また、実証の取り組みが堺市のニュースで発信されたことを機に、保護者からの問い合わせや、地域の不登校親の会からの参加依頼につながるなど、地域社会との連携の糸口もつかむことができた。
今後の展望
本実証を通じて、保護者が情報収集を始めてから、実際に子どもが家を出て通えるようになるまでに半年から1年ほどの期間を要するケースが多いことが明らかになった。今後はこの実態を踏まえ、SNS等を通じた継続的な情報発信を行い、利用開始前から保護者と定期的な接点を持てるサポート体制を構築していく。また、実証で有効性が確認されたアクティビティ中心のアプローチや、遅めの時間設定(10時~)での受け入れを継続し、より子どものニーズに寄り添った運営を進める。行政の支援が届きにくい不登校初期の家庭を支える、民間セーフティネットとしての役割を果たしていく。
Fun Foot English
実証テーマ
サッカーを通じて勉強感覚なく英語を学べるスクール
実証概要
「遊び(サッカー)」を通じて自然に「英語」を習得する、小学生(U-12)向けスクールの運営検証を行いました。机に向かう座学ではなく、体を動かしながら英語に触れることで、英語を「勉強の目的」ではなく「コミュニケーションの手段」として使う環境を構築。外国人コーチの参加や、海外のサッカークラブとのビデオレター交換などを取り入れ、生きた英語力の定着と異文化への興味関心を育む効果を検証しました。
実証フィールド
Wellスポーツガーデン登美丘(モリタテニススクール登美丘)
協力:モリタスポーツ・サービス株式会社、外国人コーチ
実証レポート
「好き」が「努力」に勝る!海外の友だちへ向けたビデオレターが発話を引き出す
英語に苦手意識を持つ子どもたちでも、大好きなサッカーを通じれば自発的に英語を話すようになるのか。本実証では、2026年1月〜2月にかけて定期スクールを実施し、その効果を検証しました。
最大の成果は、「誰に伝えるか」という明確な目的を持たせることが、子どもたちの英語への意欲を劇的に高めると確認できた点です。実証では、アメリカのフットサルクラブに向けて「実際に海外の友だちに自分たちのことを伝える」という目的でビデオレターを作成しました。
ビデオレターの取り組み前は、ルールとして英語使用を促しても子どもたちの発話回数は1分間に約4回程度でしたが、ビデオレター作成という目的ができた後は、ルールを緩和したにもかかわらず1分間に約20回へと急増。自発的な英語の発話量が5倍に増えるという素晴らしい結果が出ました。
また、参加した子どもたちの80%以上が「英語を話して間違えても恥ずかしくない」と回答し、英語を話すことへの心理的なハードルが大きく下がったこともアンケートからわかりました。
集客の面では、公式ホームページの公開に加え、地域の情報メディア「ママオアシス」での記事掲載や、地元店舗へのチラシ設置などを実施。堺市での実証事業という信頼感が後押しとなり、地域ネットワークと連携した集客の仕組みづくりを進めることができました。
今後の展望
実証を通じて、指導カリキュラムの標準化や、体験から継続的な入会へつなげる仕組みづくりといった事業運営上の課題も明確になりました。
今後は、海外クラブとのビデオレターを通じた国際交流を継続しつつ、ウェブサイトやLINEを活用したプロモーションを強化し、春の新規入会へつなげていく予定です。また、こうした「サッカー×英語」の学習環境は他の教育現場でも活用できると考え、市内の教育機関(株式会社キンダーキッズ等)へ課外活動としてのプログラム導入を提案しています。堺市発の実践的な英語学習モデルとして、さらなる事業展開をめざします。
株式会社mediVR
実証テーマ
みんなを元気に、まちを笑顔に:VRリハビリで創る共生社会
実証概要
仮想現実(VR)技術を用いたリハビリテーション手法を、医療や福祉だけでなく、教育分野へも展開する可能性を検証しました。高齢者の機能回復はもちろんのこと、子どもたちの運動機能や認知機能の向上にどのような有用性があるかを模索し、社会的課題であるウェルビーイング(心身の健康と幸福)への寄与や、介護・支援現場の負担軽減に繋がる波及効果を実証することをめざします。
実証フィールド
堺市立上神谷支援学校
実証レポート
医療の枠を超え、教育現場へ。VR技術が拓く子どもたちの新たな可能性
超高齢社会において、リハビリテーションの重要性は広く認知されていますが、本実証ではその枠組みをさらに広げ、「子どもたちの成長と教育」におけるVR技術の活用可能性を探求しました。
具体的な取り組みとして、堺市内の「上神谷支援学校」を訪問し、教育現場の最前線におられる校長先生をはじめとする担当教員に、実際にVRリハビリの実機(mediVR KAGURA)を装着・体験していただきました。特別支援教育の現場においてどのような活用ニーズがあるのか、そして実際に子どもたちが使用する際の安全性や運用面での課題について、リアルなフィードバックを直接収集しました。
今回、教育の専門家である先生方に実機を体感していただいたことは、今後の教育・福祉分野への展開に向けて価値のある第一歩となりました。
今後の展望
上神谷支援学校での意見交換を通じて得られたリアルな声をもとに、今後は子ども向けのアプローチ手法やプログラムのブラッシュアップを図っていきます。教育現場での継続的な実証に向けた調整を丁寧に進めるとともに、医療・福祉分野での展開も視野に入れ、高齢者や子どもたちのウェルビーイング向上と、介護・支援に関わる方々の負担軽減に寄与する「VRリハビリによる共生社会」の実現をめざして事業を推進していきます。
株式会社ReTaby
実証テーマ
ReTabyが勧める!かかりつけ医療機関発着のお出かけ推進プロジェクト
実証概要
「かかりつけの医療機関までは自力で通院できるが、それ以外の外出機会が少ない」という高齢者を対象に、堺市内の医療機関を発着拠点とした日帰り旅行を実施。旅程管理の有資格者や看護師が同行し、バリアフリーや体力面に配慮した安心の行程を設計することで、高齢者の外出機会の創出と健康寿命の延伸効果を検証するとともに、持続可能なユニバーサルツーリズムのモデル構築をめざす。
実証フィールド
堺市西区・堺区の医療機関(計10施設)
協力バス会社:有限会社はごろも交通(堺市西区)
実証レポート
いつもの「かかりつけ医」から出発。外出への不安を軽減する安心の小旅行
外出や社会参加の機会の減少は、心身機能の低下や生活の質の低下につながることが指摘されています。高齢者の健康寿命を延ばすためには、社会参加や外出の機会を作ることが非常に重要です。しかし、体力面への不安や移動手段の制約から自力での遠出を諦めてしまうケースは少なくありません。そこで本実証では、高齢者にとって最も身近で安心感のある「かかりつけ医療機関」を集合・解散の拠点とし、専門的なサポートを伴う日帰り旅行を企画・実施しました。
実証では、堺市内の複数の医療機関の協力を得て、院内に専用のポスターや申込用紙(回収ボックス)を設置し、通院される患者様へ直接アプローチを行いました。募集の過程では「参加費用への懸念」といった声も寄せられましたが、旅程表を視認性の高い親しみやすいデザインへ改善し、SNSでの発信も強化しました。その結果、12月に実施した明日香村へのツアーでは、西区の医療機関から参加申し込みを獲得し、催行することができました。
参加者からは大変好評で、看護師や専門スタッフが同行する「医療機関発着モデル」が、外出に対する高齢者の外出に伴う不安や移動上の制約を大きく下げる有効な仕組みであることが、本実証を通じて明確に確認されました。
今後の展望
医療機関との連携モデルの有効性が実証された一方で、事業化に向けては「安定的な集客ルートの確立」や「参加者の要介護度に応じた柔軟な価格設計」などの課題も可視化されました。今後はこの知見を活かし、医療機関だけでなく地域包括支援センターや高齢者施設等へも連携の輪を広げ、施設発着ツアーの展開によるさらなる参加ハードルの低減を図ります。引き続き市内の交通事業者や観光資源との連携を深め、堺市発の持続可能な「地域福祉・観光モデル」として事業を発展させていきます。
株式会社wakuca
実証テーマ
音環境ストレスを軽減するイヤーウェアの有効性および働く人々のウェルビーイング向上に向けた社会実装の実証
実証概要
日常にあふれる音によるストレス(音疲れ)を軽減するために開発された、日本発のイヤーウェア「swune(スーン)」の有効性を検証しました。堺市にお住まいの方や市内の企業・施設のご協力を得て、オフィスや接客窓口から、機械音が響く製造現場まで、さまざまな環境における音ストレスの実態を調査。新しいケア手段としてのニーズや、働く人々のウェルビーイング(心身の健康と幸福)向上にどれだけ寄与できるかを実証しました。
実証フィールド
市民ヒアリング:堺市100人カイギ、S-Cube、市内の医療機関等
作業環境検証:株式会社西川由染晒工場、株式会社モコクリエイト ほか市内企業
実証レポート
「音を遮断せず、会話ができる」製造現場で見つけたイヤーウェアの新しい価値
「人前で着けづらい」「自分が気にしすぎているだけだと思って我慢していた」。実証期間中に200名以上の方へヒアリングを行う中で、音環境に対するストレスが、想像以上に多くの人が抱える「隠れた社会課題」であることが浮き彫りになりました。
本実証では、約50名以上の方に製品(swune)を試着していただいた結果、なんと95%以上の方が「心地よさ」や「音の変化」を実感。特に大きな成果となったのは、株式会社西川由染晒工場にご協力いただいた「製造現場」での検証です。
従来の耳栓は音を完全に遮断してしまうため、作業中のコミュニケーションが取りづらいという課題がありました。しかし、swuneを1週間試用した従業員の方からは「耳栓と同程度に機械音の負担が減るのに、着けたまま従業員同士で会話ができる」という驚きの声が寄せられました。オフィスなどの静かな環境だけでなく、騒音の多い製造現場の作業効率やコミュニケーション維持にも大きく貢献できるという「新たな価値」が実証されたのです。
また、実証を通じて「初めてだと装着の向きが分かりにくい」というご意見もいただき、右耳用に点字の目印を入れるなどの細やかな製品アップデートも行い、社会実装に向けた準備を大きく前進させることができました。
今後の展望
音環境のケアが働く人々の環境改善に直結することが証明された本実証は、大きな反響を呼びました。この実績を起点として、国内最大級のスタートアップイベント「SusHi Tech Tokyo」への登壇や、YAMAHA主催グローバルビジネスコンテスト「TRANSPOSE」の日本代表に選出されるなど、事業が大きく前進しました。
2026年3月10日の法人化を経て、今春の「swune」ベータ版のリリースおよび販売開始に向けた準備を加速させています。また、実証でご協力いただいた市内企業との連携は今後も継続し、現場でのリアルな活用事例を動画コンテンツとして広く発信していく予定です。
