2024年度

株式会社フィールトラスト
実証テーマ
介護歯科連携。高齢者の口腔を地域で見える化。AI活用で早期発見「オクチミル」の開発
実証概要
訪問歯科と介護施設の連携を深め、口腔ケアのデジタル化を推進することをめざす。AIによる口腔状態の可視化ツール「オクチミル」や、3Dプリンタを活用した義歯製作「デジタルデンチャー」を導入し、歯科受診の促進と医療・介護現場の負担軽減、そして高齢者の健康寿命の延伸を図る。
実証フィールド
歯科医院:諏訪ノ森歯科・矯正歯科
介護施設:ReHope堺北
大阪市・高石市・豊中市の歯科医院・介護施設にもご協力いただきました。
実証レポート
堺市発、医療DXで変わる口腔ケア─訪問歯科と介護施設がつながる新しい連携モデル
超高齢社会を迎える中、高齢者の口腔ケアの重要性が高まっている。特に、誤嚥性肺炎や低栄養、口腔機能低下などは健康寿命に大きく影響する要因であり、訪問歯科と介護現場との連携が今後ますます求められる。本実証では、株式会社フィールトラストが、AIによる口腔状態の可視化ツール「オクチミル」および3Dプリント技術を活用した義歯製作「デジタルデンチャー」を堺市内外の複数施設に導入し、口腔ケアのDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んだ。
実証の結果、介護施設における口腔ケア記録の簡素化と歯科医師との情報連携の効率化が図られ、介護スタッフの負担軽減につながった。また、オクチミルの導入により、家族や介護スタッフが口腔の変化に気づきやすくなり、歯科受診の促進が期待されることが示された。デジタルデンチャーにおいては、従来40日以上を要していた義歯製作が最短1週間まで短縮され、再製作や調整も容易になるなど、QOL向上に寄与する成果が得られた。
今回の実証を通じて、堺市が進める地域医療・介護連携のモデルケースとして、医療DXの実装可能性が確認された。今後は、堺市での実績をもとに、全国への展開を視野に入れるとともに、堺市内での営業所設置や拠点整備を含めた事業化の検討を進めていく予定である。
今後の展望
本実証で得られた成果をもとに、オクチミルおよびデジタルデンチャーの事業化を堺市から本格的に推進していきたい。今後は堺市内での導入拡大を足がかりに、全国の介護施設・訪問歯科への展開を図るとともに、地域密着型の営業所設置も検討している。また、オクチミルおよびデジタルデンチャーの事業化・市場化を加速するため2025年中の新法人の立ち上げも考えている。医療・介護現場におけるDXのロールモデルとして、堺発の新たな医療インフラの構築をめざす。


株式会社UJC リベルダージ
実証テーマ
柔術の護⾝術を活⽤した幼児教室で親⼦の⼼の成⻑を育み、幼児の体⼒向上を⽬指す
実証概要
⼦どもの体⼒向上や健康的な⽣活習慣の確⽴、⾮認知能⼒の涵養を⽬的に、3〜5 歳の幼児とその親を対象にした幼児教室で効果を数値化し、発達段階の⼦どもに有益であることを検証する。
実証フィールド
堺市⼦育て⽀援施設さかいっこひろば
社会福祉法⼈みどり会幼保連携型認定⼦ども園 ⼋⽥荘こども園
UJC リベルダージスクール
実証レポート
柔術を活用した親子参加型の運動プログラムで、幼児の体力向上と非認知能力の変化を検証
近年、都市化の進行とともに、幼児の運動不足が深刻な課題となっており、幼少期からの運動習慣の確立が求められている。そこで今回、3~5歳の幼児とその保護者を対象に、身体の使い方や判断力、礼儀を学ぶ手段としても広く活用されている柔術を活用した運動プログラムを導入し、その効果を数値化する実証を行った。
① 体力向上の効果
実証期間(2023年12月~2024年3月)に、3つの実証フィールドで計83名が参加。体力測定(長座前屈、立ち幅跳び、ソフトボール投げ、反復横跳びなど7項目)を実施した結果、測定項目の約7割で向上が見られた。特に、体幹の安定性や姿勢改善、敏捷性向上が確認され、幼児期からの適切な運動の重要性が示された。
② 非認知能力の変化
スクール独自の「キャラクター開発プログラム」を導入し、「責任」をテーマとした行動指針を取り入れた。子どもたちは「開けたら閉める」「電気を消す」などの生活習慣を意識しながらポイント制のゲームに取り組み、協調性や自己管理能力の向上が確認された。また、⽂部科学省や教育機関で評価ツールとして利⽤されているSDQ(Strength and Difficulties)などを活用した測定では、7名中5名の点数が改善し、情緒的安定や社会性の向上が確認された。
③ 参加者の受け入れとプログラムの調整
柔術に対する「格闘技」という先入観を払拭するため、「親子ふれあい体操」としてプログラムを再構成。親子の触れ合いを重視することで、護身術を取り入れた運動として受け入れられ、参加意欲の向上につながった。
今後の展望
今回の実証を通じて、幼児向け護身術プログラムの有用性が確認された。今後は、堺市内のこども園や教育機関との連携をさらに強化し、地域での継続的な導入モデルを構築することで、事業の安定性と信頼性の向上を図る。将来的には、堺発のプログラムとして他自治体への横展開をめざすとともに、インストラクターの育成や新たな拠点の開設を通じて、事業の拡大と持続的な成長を進めていく。最終的には、「堺に生まれ育った子どもなら、みんな護身術が学べる」社会の実現をめざし、幼児期からの健やかな運動習慣の定着に貢献していきたい。


株式会社mairu tech
実証テーマ
人生100年時代の持続的な医療体制の構築に向けた、「mairu」による医療・福祉モビリティ展開モデルの社会実証
実証概要
福祉タクシーや民間救急などの支援付き移動サービスの利便性向上をめざす「mairuシステム」を療養期病床を有する医療機関をメインにご活用いただき、実際の使用環境における問題点を洗い出し、システムの実用性と効果の向上をめざしてユーザーインターフェースの改善・新機能などを検証する。
実証フィールド
堺市内医療機関および高齢者福祉施設(計12機関)
実証レポート
搬送予約のデジタル化により、地域医療と利用者の負担を軽減するシステムの有効性を検証
高齢化が急速に進行する堺市において、非緊急の医療・福祉搬送の効率化は喫緊の課題である。特に、急性期から回復期、療養期といった病院間での転院搬送や、退院時の搬送が多く発生している現場では、電話による予約調整が主流であり、病院職員や患者家族にとって大きな負担となっている。
このような課題を背景に、開発を進める搬送予約・配車システム「mairuシステム」のユーザーリサーチおよび機能検証を堺市にて実施した。本システムは、非緊急搬送における予約作業を数秒で完了できることを特徴とし、搬送情報の見える化や一元管理を可能にするものである。今回の実証では、堺市内の12の医療・福祉機関の協力を得て、予約担当者であるメディカルソーシャルワーカーや看護師、患者家族などへのインタビュー調査を行った。調査の結果、夜間や休日における搬送の確保が難しいこと、事業者ごとに異なる料金や対応内容の把握が困難であることなど、従来の運用における課題が明らかになった。
これらのフィードバックをもとに、「mairuシステム」のUI/UX改善にも取り組み、より直感的な画面設計と分かりやすい情報表示をめざした改修を行った。実際にシステムを試用した医療現場の担当者からは、「操作が簡単になった」「確認の手間が大幅に減った」といった肯定的な評価が得られた。地域内での搬送手配がスムーズになることで、病院の業務負担の軽減だけでなく、患者やその家族の不安解消にもつながることが示唆された。
今後の展望
本実証を通じて、医療・福祉搬送のデジタル化が地域医療の現場で実用的かつ効果的であることが確認された。予約手続きの効率化により、病院職員や患者家族の負担軽減が図られ、安心して利用できる搬送体制の構築が期待される。
今後は、急性期病院に限らず、療養型施設や介護施設にも導入を広げることで、堺市内における搬送インフラの整備が進み、介護事業の活性化にもつながると考えられる。また、需要に応じた民間救急の拠点整備も視野に入れることで、夜間や休日の対応力が向上し、地域全体の医療・福祉サービスの質の底上げが期待できる。
さらに、堺市での営業所設置や、今回得られた実証成果を基にした事業化も前向きに検討しており、将来的には堺発の先進的な搬送サービスモデルとして、他地域への展開も視野に入れている。


サンリット・シードリングス株式会社
実証テーマ
ネイチャーポジティブ社会化をめざした地域の生物多様性ネットワークの可視化
実証概要
土地の湿潤度や緑被地などの様々な地形データ(GIS)をベースに、土壌の微生物DNA解析結果と生物の専門家の知見を組み合わせることで、ビオトープを作るのに適したエリアを予測できる”生息地ポテンシャル地図の堺市版”を作成、マップの有用性について検証する。
実証フィールド
堺市全域および南部丘陵の緑地保全エリア
協力:堺市公園緑地整備課
実証レポート
生物多様性のポテンシャルを可視化し、持続可能な緑地の未来へ
都市化が進む中、生態系の維持は重要な課題となっている。特に、堺市南部丘陵緑地のような自然豊かなエリアでは、生物が生息しやすい環境を維持することが、生物多様性の確保だけでなく、防災や気候変動対策にもつながる。サンリット・シードリングス株式会社は、土壌微生物DNA解析やGIS(地理情報システム)データを活用し、生物多様性ポテンシャルの可視化に取り組んだ。
実証の結果、南部丘陵の緑地が都市部の生態系ネットワークにおいて重要な役割を果たしていることが明らかになった。特に、蝶類の移動距離を基準に緑地のネットワークを可視化したところ、大規模な緑地が少ない都市部でも、小規模な緑地が連続することで生物が移動しやすくなることが確認された。また、土壌微生物DNA解析の結果、堺市の森林には西日本の里山と同等以上の多様な菌類が生息しており、土壌の豊かさが生態系の維持に寄与していることも示された。
今回の実証により、堺市が推進する「堺の森活」のような取り組みの重要性が再確認された。かつて里山として利用されていた南部丘陵の緑地は、現在では手入れが行き届かず放置されるケースが増えている。しかし、適切な管理を行うことで、緑地は生態系の重要な拠点としての機能を取り戻し、地域の環境を改善する可能性がある。
今回の実証の成果を活かし、堺市の緑地保全活動や生物多様性の維持に関する議論を深めていくことが期待される。
詳細はこちらをご確認ください。
堺市の生息地ポテンシャルマップについて(サンリット・シードリングス)
今後の展望
堺市内に本社や事業所・工場を有する企業のサステナビリティ情報開示にあたり、堺市内の環境、特に南部丘陵地における里山管理活動との連携が重視される流れが来ることを期待している。そのような機運を醸成するための火付け役として動く金融関係のセクターとも連携し、本事業成果を活用したサステナビリティ情報開示支援サービスを、対象企業に提供できるよう整備を行っていきたい。

